監督仁村イズム−若竜12度目の優勝
<00年9月2日付け「中日スポーツ」より引用>
戦いに終わりはない。まして1軍の下支えとして存在する2軍にとって、
リーグ制覇は、ある意味で“副産物”だろう。いかに選手を鍛え上げるか、
3年で初の胴上げを味わった仁村徹監督もそこに心血を注ぐ。その仁村イズ
ムとは・・・。
ひたすらに勝利を追求するのが1軍。だが、2軍は、さまざまな立場の選
手が混在した集団だ。育成が第一義の高卒ルーキーがいれば、酸いも甘いも
知り尽くしたプロ10年目の以上の選手がいる。また故障でリハビリにのみ汗
を流す人も・・・。そんな集団をとりまとめるのに不可欠なのが、臨機応変
なコミュニケーションだ。
今季、ディンゴが加入したことにより、李が枠からはじき出される形で開
幕から2軍に。どんなに打ちまくっても、上がれる見込みもないつらい境遇。
その心中を察した仁村監督は、左翼だけではなく三塁のポジションにもチャ
レンジするよう話し合った。
仁村徹監督「気持ちが切れたら終わり。それに1軍のリザーブとして有
事に備える必要がある」
プレーにミスは付き物。だが、1軍選手になる必要条件はミスが起きる確
率をより低く、プレーの精度を高めることに尽きる。その方策として常に実
行しているのが、即座に反省し、ゲーム後に反復練習させることだ。
仁村徹監督「ミスが起きたら、すぐに原因を追及しなくては駄目。次の
試合に新たな気持ちで臨むためにも、明日と言わず、その
日のうちに解決しなくては」
過日、ランダウンプレーでミスが出た試合後、スタンドの観客が消えてか
ら、グラウンドに全員集合をかけた。延々と単純なそのプレーを繰り返すこ
と約2時間。既に日は暮れていた。
勝つことが究極の目標ではないが、「勝利」に導く「方程式」には固執し
ている。
仁村徹監督「投手なら投げることに加えて確実なバントができること。
野手にしても(1軍昇格しても)多くのチャンスが与えられ
るわけじゃない。ワンチャンスでどれだけしっかりとした
仕事ができるようにするか。それが大切なんです」
それは決してヒットを放つことではない。例えば1死三塁。仁村監督が打
席の打者にまず要求するのが犠飛。その次がたたきつけたゴロ。それが駄目
ならスクイズ−となる。今季、井端が渋い働きを1軍で見せている。本人の
素質もさることながら、仁村イズムと無縁ではないだろう。
※若竜12度目の優勝
開幕からの4連勝を含め、15試合を12勝2敗1分けと快調なスタートを切
った若竜。だが、それ以上に、猛ダッシュは昨年の覇者・阪神だ。開幕か
ら10連勝を決め、優勝争いは序盤から竜虎のマッチレースに。
ただ、4月22日にディンゴと李が入れ代わり、4月に4勝を挙げた鶴田が
1軍に昇格するなど、入れ替えが多くなると進撃にも陰りが出た。5月半
ばには初の5連敗を喫し、一度は2位に転落した。しかし、新星が芽をふ
く。矢口、宮越、福沢ら若手投手が順次ローテーション入り。当初は一進
一退も、徐々に力を発揮し、球宴前後には8連勝という形となって出た。
8月になって、投手陣に疲れが出始めたが、今度は打線が爆発。高橋、原
田、荒木らが投手を援護するように打ちまくって10連勝。投打の歯車がか
み合って優勝にたどりついた。
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